「空気」例題2の解説

今日は例題2の答えを解説いたしましょう。

例題2
「ドリカムの歌って、いいよね?」と友人が聞いてきたときの「空気」は何か。

模範解答
この友人はドリカムファンで、自分が好きな歌への思いを語りたくなったので、あなたが聞いてくれるかどうか確認している。

これは比較的簡単でわかりやすいケースではないでしょうか。共通の趣味をもった友人同士で語り合うことはめずらしいことではなく、「好きな話題を切り出すときのキッカケ」としては定石ともいえるでしょう。

しかし! この鉄板であり、定石であるこの切り出し方を、自分ではしているのに、人から切り出されると見当ちがいの返答をしてしまう不思議ちゃんは意外とめずらしくありません。

これは本当に不思議な現象であり、謎です。
具体的に解説いたしますね。

例えば友人から「ドリカムの歌って、いいよね?」とドリカムの話をしたくて切り出したとき、聞かれた不思議ちゃんはたまたまレベッカのほうが好きだったとします。むしろドリカムは聞かないくらい。
このとき不思議ちゃんは思わず「私は(ドリカムは)いいとは思わない」と答えてしまいます。

すると友人はドリカムの話をしたかったけれど、渋々やめるわけです。内心「(つきあい悪いなぁ~)」って思うわけです。
そのくせ、不思議ちゃんが別のときにレベッカのことを語りたくなったとき、やっぱり不思議ちゃんも「レベッカっていい曲だよね?」って同じ切り出し方をします。

もしこのとき、不思議ちゃんの話し相手が同じような不思議ちゃんで、その人が好きな歌がアニメソングだったりすると「私はロックは聴かないです」と答えられてしまいます。
レベッカ好きの不思議ちゃんは「(いい曲なんだけどな~)」と思いながらレベッカの話はやめることでしょう。

ここでポイントなのは、内向的な人に多いのですが、「自分がされたら悲しいことを、自分も人にしていることに気づかない」という不思議な現象、なぜか相手と自分を置き換えられない謎がここにあるわけです。

心理学でも「社会性」において、この「置き換え」ができるかどうかが重要であると考えられています。

つまり「自分がされたら悲しいことを、相手にしなければいい」ということなのですが、学校などで教わる「相手の立場になって考えよう」という指導は、どうやら大袈裟にとらえられて「悪いことをしないようにするための指導」だと考え、迷惑をかけることをしていない場面では「相手の立場になって考える」ことはそれほど重要ではないとして深く考えず、まったく意識しないまま成長してしまう……、そのように見受けられるのです。

この些細な「置き換え」を意識せずにコミュニケーションを図る子供たちは、そんなつもりもないところで「つきあい悪い人」と思われてしまい、友人関係が広がらない現実に困惑します。不思議ちゃんのまま、共通の話題をもてる相手とだけ語り合い、自分の人間関係の幅の狭さは「自分はコミュニケーションが苦手だからだ」とまで思いこんでしまいます。

ここまで読んで「じゃあ、どうしたらいいの?」と思っている方は、いわゆる「不思議ちゃん」と同じタイプに周りから見られていると思いますが、もちろんどうしたらいいかも解説させていただきます。

友人が「ドリカムの歌って、いいよね?」と聞いてきたのは、「空気」では「ドリカムの歌について、あなたはどう思うか」という質問をしたのではございません。
友人に向かって聞いてきたことに意味がありますから、友人として自分の話を聞いてくれるかどうかの確認であって、その質問に対して「いいとは思わない」と答えることは、なんと「空気」としては「あなたと友だちでは、いられない」あるいは「あなたのドリカムの話を今は聞きたくない」という意思表示になってしまうのです。

友人ってね、恋人も家族もだけれど、「相手が興味をもっているものを尊重してあげる」ところから信頼関係ができるといえるものです。その話を聞いてあげることはコミュニケーションの基本でもあります。このことは不思議ちゃんだって「自分のことを否定しないでほしい」という思いはありますから同じなんです。ここでも「置き換え」が必要です。

もちろん何でもかんでも聞かないといけないということはないし、少々聞かないくらいですぐに信頼関係にヒビが入るほどの関係ならまだ友人関係とはいえないでしょう。

肝心なのは「友人ができるタイミングでお互いに相手の話を聞こうと思わないなら友人関係になることを拒否した」という意思表示になってしまい、友人が増えない原因のひとつになってしまうということです。

結論として「コミュニケーションが苦手な人」は実はコミュニケーションが苦手なのではなく、「置き換えを意識しないまま、言葉どおりの解釈で会話してしまい、誤解される原因を自分で作っている」ということです。

だから、好きで友だちでいたい相手の話は、たとえ興味がなくても、相手の思いを否定せずに聞いてあげることは友情であり、あなたの話も興味がなくても興味があるように聞いてくれる相手こそが友人です。

友人であるからには「友人の話に興味をもたないといけない」ということではございませんので、ご注意を。

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