超訳『グッド*ウィル*ハンティング/旅立ち』

ネタバレを含みます。まだ見ていないかたは、映画作品を見てから、この記事を読むことをお勧めいたします。

この映画作品は名作と評されていますが、細やかな心理描写から、人生経験がないと分かりにくいかもしれません。
この映画作品が本来伝えたかったメッセージと、難解なシーンの解説をすることで、この映画作品の価値を理解し、物語と似た人生経験をしなくても、あなた自身の精神的成長に寄与するものと信じます。
まずはあらすじを紹介します。

登場人物は、主に5名。
主人公のウィル。20歳の男性で、ハーバード大学の清掃員のアルバイトをしています。
ウィルの親友チャッキー。ウィルを含めた遊び仲間4人グループの1人です。ウィルと遊んだり、同じ職場へ一緒に働きに行ったりしています。
ウィルの交際相手スカイリー。ハーバード大学に通う女性です。
数学者ジェラルド・ランボー教授。ウィルの才能にほれ込み、ウィルを更生しようとします。
心理学者ショーン・マグワイア教授。ジェラルドに頼まれ、ウィルにカウンセリングを施します。

ウィルは養父から児童虐待を受け、心に深い傷を負いました。自立してからはスラム街で一人暮らしをし、さまざまな仕事に就いて日銭を稼ぎながら、男友達4人グループで暴力事件などの犯罪を繰り返していました。
ハーバード大学の清掃員のアルバイトをしていたとき、廊下の掲示板で出題されていた数学の難問をこっそり解いて、だれにも気づかれないようにしていました。
ハーバード大学では大騒ぎになります。だれが解いたのか、ジェラルドは探して回りますが、やっと見つけたときには、ウィルは警察官を殴った罪で刑務所に収監されていました。
ジェラルドはウィルを刑務所から出してあげる条件として、ジェラルドの研究に協力することと、セラピストのカウンセリングを受けることを提案しました。ウィルは条件を飲み、ジェラルドは裁判所にウィルの更生の報告の義務を負うことになりました。
ジェラルドは同級生で心理学講師のショーンにウィルのカウンセリングを依頼します。
ところが、ウィルは素直にならず、トラブルを次々と起こしていきました。

さて、ここからネタバレ解説です。
『グッド・ウィル・ハンティング』を理解するにはメタ認知能力を求められますので、メタ認知を学びたい人、上達させたい人にはお役に立てると思います。

1.ウィルはなぜ自分の才能を生かそうとしないのか?

これは多くの人が初めに抱く疑問だと思います。
孤児で、養父から児童虐待を受け、心に傷を負っていたとはいえ、ウィルは精神病になっているわけではないので、軽犯罪を繰り返しながらも自立した暮らしをしています。不良少年が大人になった程度のものであって、極悪人ではありません。麻薬をせず、性犯罪を犯さず、ただ短気で、うそつきで、友達と彼女は大切にしている若者です。
ウィルはスカイラーに質問されたとき、数字と図形だけは得意だと答えていました。数字と図形だけは才能を発揮できますが、それ以外はごく普通の青年で、児童虐待を原因にして不良少年になってしまい、そのまま大人になっただけなのです。
友達や彼女から見れば、ウィルは好青年でした。

いわば、ジェラルドが世間代表として、ウィルに疑問をぶつける役割を担っています。
ウィルはジェラルドの世話になりながら、研究以外は裏切り続けます。
ウィルと着実に信頼関係を築いていくショーンとは違い、ジェラルドはウィルを追い詰める悪役的存在ともなります。つまり、この映画は世間の冷酷さも表現しています。

ウィルがなぜ反抗的なのか、多くの人が理解できないし、この映画自体も見ている人をその好奇心で引き込んでいます。
ここでメタ認知能力が未熟だと、ウィルの心情を理解しようとせずに、「ただ反抗的なキャラクターとして表現されている」と誤解します。実際、この映画の感想などを検索すると「ウィルは天才という設定なのに、ばかげた行動ばかりして意味不明だ。矛盾している」という解釈も散見されるほどです。

ここまで書いて、むしろ「ウィルの気持ちが分からない人が多いの?」と驚いている人も少なからずいることでしょう。そういったかたがたからすれば、自然な悩み方であり、人の心があればだれでも理解できると思い込んでいるからです。

十人十色とはいわれますが、これほど分からない人には分からないし、分かってくれる人には説明しなくとも分かってくれるほど当然に思えるものなのです。

間違っても「映画の設定で、ごり押しされた意味なき反抗」ではありません。
ウィルの反抗的態度は、ずばりユング心理学のタイプ論で分類される「感覚型」特有の頑固さなのです。
感覚型の人々に言わせれば「正当な理由があり、当然すぎて言葉で表現したことがなく、いざ言葉に表現しようとすると、分からない人がどう分からないのかすら想像できないので説明に困る」ほどです。

わたしは感覚型ではありませんが、感覚型の代弁者となってウィルが反抗的な理由を説明してみましょう。

ウィルは、人に指図されるのが嫌いなのです。大金をくれると言われても、成功を約束されても、人が決めたことに従うことは操り人形であって、自分の満足に1ミリも貢献しません。ひどいときは、しようと思っていたことを「こうするといいよ」と人から先に言われてしまうと、梃子でも動かぬほど、絶対にやらなくなります。感覚型の人に対しては背中を押すことはできても、提案してはならないのです。

「あ、それ、わたしだ!」なんて笑っている人はいませんか? あなたと同じ価値観の人は感覚型の人だけであって、ほかのタイプの人はその感情を理解できません。

『グッド・ウィル・ハンティング』を見て、ウィルが反抗的な理由は「反社会的性格だからだろう」とか、「だれも信じられなくなって、逃げているのだろう」とか、「友達と離れたくなくて、感情的になって拒否しているのだろう」と解釈した人は残念ながら、完全に外れです。その証拠に、これを裏付ける物語の展開があるからです。
これは「映画を見る人の解釈の違い」ではありません。感覚型にしか分からない事情、都合というものがあり、原作者は「分かってくれるだろう」と信じて物語を組み立てています。このことから、原作者であるマット・デイモンとベン・アフレックは感覚型の可能性が高いといえます。

2.ショーンはなぜウィルの心を開かせることができたのか?

ウィルは刑務所に戻りたくない一心で、しぶしぶセラピストのカウンセリングを受けますが、セラピストを怒らせることによって、セラピストのほうから断らせる作戦に出ます。
ちょっとひねくれているように見えますが、これも感覚型しか考えない作戦です。感覚型がひねくれていると言いたいのではなくて、感覚型の人にとっては、自分が操られたくない分、相手も操られたくないだろうと考えます。セラピストが感覚型だったら、やめろと言えば言うほどやめなくなるだろうと考えるわけです。それならば、嫌われて断られるほうが、相手は自主的に身を引いてくれます。
では、ショーンはなぜ一度怒っておきながら、断らなかったのでしょうか。それはショーンも感覚型だったからで、ウィルの作戦を自然に読み取っていたからです。
そこで、その作戦を「子供がやること」として公園で説教しました。ウィルにだって最低限のプライドがあります。作戦に引っかかって、感情的になって怒るセラピストのことを「ガキだ」「大人げない」と心の中で見下していたウィルのほうが「ガキだ」「大人げない」と言われてしまったのですから、ショーンから「ガキだ」と言われない方法で断らせないといけません。
さすがに双方、黙り込んだままカウンセリングが終わるという事態になります。
理解できないジェラルドはショーンをしかります。しかし、ショーンは意に介しません。
「(ウィルに対して)俺から話したら、俺の負けだ」とまでショーンは言います。
ここは、感覚型の性格とは無関係です。まさに、メタ認知能力のなせる業です。
なぜ、ショーンから話しかけたらだめなのか、分かりますでしょうか?

メタ認知能力があるかないかにかかわらず、人は「自分からしたくせに」というところで、文句が言えなくなる傾向があります。相手をなめ切っているときは、そんなこともお構いなしの場合もありますが、なめられたくないとき、弱みを握られたくないときには「自分からしたくせに」と言われないように駆け引きされます。
ウィルには「聞かれたから答えただけ」とか「聞かれても、おれは答えるもんか」とか、そういった言い訳や意思表示のきっかけをすべて与えられなかったのです。
しびれを切らしたウィルは、自分はガキじゃないと表現したい衝動、あるいは、ショーンの失敗を見つけて面食らわせようという衝動に駆られ、ウィルの口を開かせました。
ショーンはしくじらず、すべて笑顔で、時折、ウィルを笑わせながら、すべてウィルのペースに合わせました。
そこへ、スカイリーと出会ったばかりのウィルは、ショーンの失敗探しついでに、スカイリーとうまくいっているというはったりをかまします。恋愛経験がないウィルは墓穴を掘ることになり、ショーンにパートナーとうまくいく方法をはぐらかされてしまうのです。
興味を持たせたショーンの勝ちです。

次に、同じ感覚型であるショーンは、ウィルが指図されることが嫌いであることを、人として当然のこととして考え接しているので、ウィルにスカイリーとうまくいく方法を一切、提案しません。ショーンは亡くなった妻の欠点を幸せな思い出とし、自分の欠点も妻に把握されていたこと、そして、それは2人の秘密であることが最愛のパートナーの証だとウィルに諭しました。
だから、完璧な男になる必要はないし、相手が完璧な女であることはあり得ないとして、スカイリーと真剣に向き合えるように背中を押しただけなのです。どうしたらいいかは何も提案しませんでした。
感覚型にとって、何も知らない人にアドバイスされることほど腹立つことはないのです。
その禁忌を犯さないショーンは信頼できる大人だと、ウィルの目には映りました。

スカイリーがカリフォルニアへ一緒に行こうと言っただけで、ウィルはなぜキレたのか?

ウィルが愛した女性スカイリーは感覚型ではありません。これもこの映画の名作たる所以といえます。
スカイリーはユング心理学のタイプ論でいう「直観型」です。
ウィルと同じ感覚型の人はこの映画を見ていると、自然とウィルに共感できたでしょうが、スカイリーの気持ちはまったく分からなかったことでしょう。
感覚型にとって、スカイリーがウィルと一緒に遠くの街へ引っ越して、うまくいくと信じている神経が分かりません。
百歩譲って未来のことはだれにも分からないことは当然といたしましょう。
しかし、感覚型以外の人にとっては、ウィルがスカイリーに聞いた「本気かい?」の質問に、スカイリーが「本気よ」と答えた後、ウィルが「なぜ分かる?」と不思議がったことは、まったく意味不明でしょう。
感覚型以外の人にとっては「自分が本気かどうか、自分がいちばん分かるのが当然」と思っています。
ところが、感覚型の人は「自分が本気かどうか」が分からないのが当たり前だと思っています。むしろ、気安く「本気だ」という人を信用できない証拠だとさえ思っています。感覚型にとって、本気かどうかは積み重ねた何かがあって初めて言えるものであり、実績や経験があっても常に「自分は本当にやりたいのか?」と自問自答しています。
スカイリーは決断できないウィルのことを「男らしくない」「わたしのことを信用してくれていないんじゃないか」「愛してくれてないんじゃないか」「遊びだったんじゃないか」と不信感でいっぱいになり、「男らしくなってほしい」「男らしいことを言ってほしい」の一心で「何を怖がっているの?」と問いかけます。何かスカイリーに問題があるなら言ってほしいという気持ちもあっての発言です。
感覚型と直観型は正反対の性格のため、すれ違いが起こりやすく、悪気のない発言が地雷になることはとても多いです。
ウィルにとって「何を怖がっているの?」は地雷になってしまいました。
「おれが怖がっている? おれの何が分かる! 遊びだったのか? スラムの男と遊んだ自慢をしたいだけだろう!」と一線を越えた言ってはいけない言葉をぶつけてしまいました。
スカイリーもキレてしまいます。「そんなひどいことを! 自分が臆病なんでしょ? それをわたしのせいにしないで!」
これはもう修羅場です。感覚型と直観型の間ではよくあるすれ違いです。
スカイリーは同じ気持ちが2人の間にはあると信じていて、確かめるように問いかけます。
「わたしのことが怖いんでしょ? それはわたしも同じよ! 正直に認めるわ」
ウィルにとって「怖がっている」の言葉が地雷なので、どうにもおもしろくありません。
「おれが正直じゃないのかよ!」
スカイリーはウィルがお兄さんに会わせてくれないことを苦しんでいたので、負けじと畳み込みます。
「お兄さんの話は?」
これはウィルが孤児であることを隠すために、軽くうそをついていたものでした。信頼関係が築かれれば孤児であることは正直に話したし、お兄さんが本当はいないことは謝罪するつもりでした。信頼関係が築かれる前に、何もかも正直に話す筋合いはありません。
ただでさえ自分が本気か自分で分からない感覚型は、自分の本心を言葉にすることが苦手です。
何もかもめんどくさくなって、すべてを投げ出したくなる衝動を持つことがあります。ウィルはもうスカイリーのことがうんざりになりました。もう嫌われてもいい、縁が切れてもいいという覚悟で「分かったよ」と返し、口論をやめて帰ろうとします。
スカイリーは帰したくないので、ちがうよと言ってほしくて「逃げ出すつもり?」とののしり、ウィルを引き留めようとします。
もうウィルにとって限界です。
「兄弟はいないって言えばいいのかよ! おれは孤児だよ!」
スカイリーはハッとします。ウィルを傷つけてしまった……、そう気づきました。
「知らなかった……知らなかった……」
スカイリーは顔をくしゃくしゃにして泣きながら言い訳をします。
「たばこを(体に)押し付けられたなんて話、聞きたくないだろう! 手術の痕なんかじゃない。養父に刺されたんだよ。こんな話、聞きたくないだろう! 聞きたいなんて言うな!」
スカイリーは自分の過ちの償いとして、愛しているウィルのためにできることをしたいと考え、必死で言葉をひねり出します。
「あなたを助け……」
これは感覚型にとって完全に地雷です。おまえは何様かと感じてしまう言葉です。
「おれを助ける? だれが頼んだ? おれの背中に『助けてくれ』と書いてあるのか?」
「愛してるから、一緒にいたいの!」
「いい加減なことを言うな!」
「愛してるのよ……。愛していないなら、そう言って。もう電話しないから。あなたの人生から出ていくわ」
「愛してない」
ウィルはスカイリーの部屋を出ていき、スカイリーは泣き崩れました。

感覚型にとっては、スカイリーの言葉は救いようのないひどい言葉のオンパレードです。
しかし、直観型にとっては、先回りしてお節介を焼くことが愛だと思い込んでいますので、ウィルが怖がっているなら勇気づけたいと考えたし、ウィルが安心できるように自分が努力するよと伝えたかったのです。
それに、孤児であることは愛している相手こそ正直に言えます。信頼関係云々ではなく、相手を信じられるかどうかで考えます。信じることは感覚型ほど深刻ではなく、直観型にとってスローガン程度のものです。孤児であることを正直に言える直観型にとって、兄弟がいるふりをするなんて想像できません。
ただ、自分は平気で言えるといっても、孤児であることを打ち明けることはデリケートなことであると理解はできます。ウィルの激高ぶりを見て、ただならぬ過去を持っている深刻さをやっと理解しました。
さらに、ウィルは児童虐待のつらさを語りだしたので、打ち明けてくれたことは直観型にとって信頼してくれた証です。先回りしてお節介を焼くことが愛だと思い込んでいる直観型は「力になりたい」という意味合いで「助けたい」という言葉を使ってしまいました。
それは、幸福な人から見た言い方であって、ウィルにしてみれば、そんなみじめな扱いは受けたくありません。そもそも、信頼関係が築かれるまで相手のプライバシーに踏み込まないのが感覚型のマナーです。人の心に土足で入ってくるようなスカイリーのデリカシーのなさは、ウィルにとって最低のものでした。
児童虐待の過去まで言わせてしまったスカイリーの無神経さは、スカイリー自身が後悔するものであり、まさかウィルにそんなつらい過去があるなんて、まったく想像していなかったのです。

キレてスカイリーを見限ったはずのウィルはなぜスカイリーに電話したのか?

わたしは直観型ですから、キレて縁を切ったはずのウィルがスカイリーに電話するのは理解できませんでした。
言い方を変えれば、直観型は相当な覚悟で縁を切る行動を取ります。実際、スカイリーもウィルに対して一度も「別れたい」「愛していない」とは言いません。
もちろん、浮気している相手に対しては「このままだったら別れる!」ということはあります。相手に落ち度がない場合は絶対に言いません。
今回の別れはスカイリーに落ち度があります。「愛してない」と言ったウィルのほうに、別れ話を撤回する意思があるかどうかが重要です。スカイリーからは連絡してはいけないのです。
ウィルは連絡してくれたのに、別れ話の撤回をしませんでした。

さすがに、同じ感覚型である「まな」に聞いてみました。まなが言うには、スカイリーがウィルを見限ったか、確認しているのだそうです。さらに詳しく聞いてみると、スカイリーがウィルに対してうんざりし、愛が覚めていたら、自分もそれをけじめとして完全にあきらめるのだそうです。
わたしには難しい考え方でしたが、おそらく「保留にしていいかどうか」さえも相手に気を使っているとわたしは解釈いたしました。もし、ウィルのほうからよりを戻したくなったとき、相手が迷惑ではないだろうかという確認なのでしょう。
ウィルの未熟さゆえの、スカイリーを振り回す行動であることには間違いありません。
「もし、ウィルがカリフォルニアへ行く決断ができたら、復縁してくれるかな」という身勝手な確認であるとともに、いざカリフォルニアへ向かってから手遅れだったとしても、ウィルはあきらめるつもりではありますが……。
スカイリーはウィルの本心が分からないまま、カリフォルニアへ旅立ちました。

チャッキーはウィルに何を怒っていたのか?

ウィルはジェラルドの研究をすっぽかし、チャッキーとビル解体工事の仕事に来ていました。
チャッキーはウィルに近況を聞いていると、ウィルが才能を生かすチャンスから逃げ腰になっていると気づきます。
「ウィル、おまえは親友だからこれを悪く取らないでくれ。20年たっておまえがまだここにいて、おれたちと遊んだり、こんな所で働いていたりしたら、ぶっ殺してやる。脅しじゃないぞ、おれはほんとにおまえを殺す」
ついさっきまでやさしかったチャッキーが「おまえを殺す」とまで乱暴な言葉を使っています。
これには度肝を抜かれた人は多いのではないでしょうか。
チャッキーも感覚型なのですが、ウィルは内向的で、チャッキーは外向的だという違いがあります。
ウィルにとって、チャッキーは同じ感覚型であり、よき理解者と思っていました。
ところが、ウィルの才能を理由に、ウィルと一緒にいることを拒みます。
内向的感覚型より、外向的感覚型のほうがメタ認知能力が高いのですが、外向的なほうが優れているというわけではなく、よりいっそう「自分の本気が分からない」「自分の本音が分からない」という傾向があります。
では、なぜウィルに向かって、あんなに強く突き放せるのでしょうか?
それは、チャッキーのメタ認知能力が、ウィルから見た仲間3人を想像してしまうからです。
ウィルにとっては、自分の居場所は仲間でした。今まで楽しかったし、これからも楽しくいられると思っています。
でも、チャッキーにとっては、ウィルの才能を生かすチャンスを潰してまで、その仲間といる価値は感じられないのです。
そして、正にウィルがスカイリーにキレた「情けをかけられるみじめさ」のように、チャッキーにしてみれば、ウィルが才能を生かすチャンスを捨ててまで、チャッキーたちとつるもうとする行為は、余計な義理、いらない気遣いなのです。
チャッキーの言葉を要約して振り返ってみましょう。
「いや違うぞ、おまえ。分かってねえな。自分にじゃねえだろ。おれらへの義理だ。おれは50歳になって、同じ暮らしが続いてても、それはいいんだ。文句はねえ。けど、おまえは宝くじの一等を握っている。金に換えに行くのをびびってるんだったら、ただの腑抜けだろう? おれには自慢するようなとりえはなにもねえ。ここにいるやつはみんなそうだよ。20年たって、おまえがまだうろついていたら、嫌みだぞ。そんなことをしていても、なんも意味はねえんだ」
「分からないさ」
「ああ、そうか。そうかもしんねえ。お前の家に毎日迎えに行くだろ? おれのいちばんの楽しみ知ってっか? 車を降りて、おまえんちの階段を上っていく10秒間、いつも思うんだ。ノックしたらおまえはいないかも。行先もさよならも言わず、ふといなくなる。まあ、おれの動物的勘だな」
この言葉の中にある「おれには自慢するようなとりえはなにもねえ」の言葉は本気です。感覚型は「自信ないことに自信がある」ように見えます。実はこの感情はウィルも同じなのです。
それなのに、チャッキーは「なにもとりえがないおれたちの周りにウィルがいつまでもいたら嫌みだ」とまで言って、ウィルに自分自身がどう見られているか考えさせているのです。
そして、最後に「いついなくなってもいいよ」と思わせる言葉で終えるのです。
チャッキーの友情はあまりにも深いものです。
しかし、メタ認知能力が成熟していないウィルは、まだ感覚型特有の印象を持ちます。
「おれ、チャッキーに何か悪いことしたかな」と。

ウィルの号泣のわけ

スカイリーとのすれ違いと別れ、チャッキーの突然の怒り、ウィルの頭は混乱したまま、ショーンのカウンセリングのスケジュールどおり、研究室に訪れます。
研究室には、ウィルの裁判所への報告書が取り寄せられていて、ウィルはそれに気づきます。
報告書の中には、ウィルの体に残る虐待の痕の写真が含まれていました。
ウィルはショーンに同じ経験はあるかと質問します。
ショーンは戸惑いながら、小さな声であるよと答えます。
「父親がアル中で、泥酔して帰るとだれかを殴る。だから、わたしがわざと怒らせるんだ。お袋や弟のほうへ行かないように」
ウィルも虐待経験を語りだします。そして、報告書に書かれるんだと悲しくつぶやきます。
このとき、初めてスカイリーとのその後をショーンに語るのです。
「(報告書には)ウィルは愛着障害の傾向ありとかいろいろ。人に捨てられる不安? そのせいかな、スカイリーとだめになったの」
「知らなかったよ」
「うん、別れた」
「話したいのか?」
「いや」
ここから、この映画のクライマックス・シーンに向かいます。
「ウィル、よく分からんが、これ、見たね? くだらんことばかりだ。君のせいじゃないよ」
「ああ、分かってるよ」
「わたしを見て。君のせいじゃない」
「だよね」
「君に責任はないんだよ」
「ああ、分かったよ」
「分かってない。君のせいじゃないんだ。ん?」
「分かった」
「君のせいじゃない」
「もう、いいって」
「君のせいじゃない。君のせいじゃない」
ウィルは泣きながら答えます。「ごまかすなよ」
「君のせいじゃない」
「うそをつくなって! 頼むよ、ショーン! あんただけは……」
「君のせいじゃないんだ」
ウィルは泣きくずれそうになります。
ショーンはウィルの頭を撫でながら続けます。
「君のせいじゃない」
ウィルはショーンを抱きしめて号泣します。「おれを許して。ごめんなさい、ショーン」
「全部、忘れろ」
しばらく号泣するウィルが映された後、ウィルが茫然としたまま帰宅するせりふのないシーンが続きます。
ウィルのカタルシスが始まったのです。
自宅に着いても、電球を見つめて、頭が真っ白になっています。

感覚型の人にとっては、ウィルがなぜ泣いたか、当然のことのように分かると思います。
感覚型以外の人には分かりません。
ウィルは、養父の虐待も、スカイリーのひどい言葉も、チャッキーの怒りも、それ以外の悲しい出来事もすべて、自分のせいだと思って生きてきたのです。
でも、どうしたら解決できるか、自分では分かりません。
とにかく、現状維持して、仲間を居場所として生きてきたのです。
自分がみんなに迷惑をかけている……。だから、気を使って、責任を負わないようにしてきたのです。逃げていたのではありません。迷惑をかけないように、かけないように生きてきたのです。
感覚型の人はみな言います。「自分のせいで、人の人生をかき乱したくない」と。
スカイリーの人生を背負ってしまうと、スカイリーを後悔させるかもしれない……。
仲間にも気を使い、今までどおりの自分を演じている……。
ジェラルドの研究さえも、背負いたくない。ジェラルドに迷惑をかけるかもしれない……。
感覚型は、かかわらないことが最大の「迷惑をかけない行為」であり、気心が知れた仲間の間では、今までどおりを継続して、自分のせいで変化が起きないようにすることが「迷惑をかけない行為」だと思っています。
ショーンは、報告書を見たと思しきウィルの発言から、ウィルがすべて自分のせいだと思い込んでいると気づいたのです。
同じ感覚型であるショーンでしか分からない発見でした。
何度も言われてみて感情があふれ出し、ウィルは「自分のせいではなかったんだ」と受け入れたのです。

ウィルはなぜ面接して内定しておきながら、就職先を蹴ったのか?

ウィルは就職を決断します。面接を受けて、就職が内定します。
しかし、ショーンに置手紙をして、車で街を出発してしまいます。


ショーン、
仕事の件で教授から連絡があったら、こう伝えて。
「悪いな、女を見極めたい」と。

ウィル


「女を見極めたい」とは、ショーンが亡き妻に出会った日、メジャーリーグの試合を一緒に見に行く友人に向かって言い放った言葉です。
直観型のわたしには「じゃあ、なんで面接受けたんだ?」と疑問でした。
これも「まな」に質問しました。
感覚型のまなは笑いながら言いました。
「自分に自信をつけたかったからなの。面接で受かることで自信がついたんだよね。それからじゃないと、スカイリーの所へ行けないの」
なるほど。
感覚型は、どんなに才能があっても、どんなに実績があっても、自分には自信がないと思っています。自信がないからこそ、人はがんばるとさえ思っています。

空になったウィルの部屋には、いつもどおりチャッキーが迎えに来たのですが、ウィルが旅立ったことに気づいたチャッキーは、にやっとしました。
かかわって力になろうとする直観型には分かりにくい感情ですが、感覚型にはかかわらないことで力になろうとする愛情があります。寂しいは寂しいのですが、ウィルが旅立ってくれたこと、自分の足で生きようとしてくれたのがうれしいのだそうです。

ウィルの勝手とはいえ、スカイリーに最後の電話をしたとき、スカイリーの「愛してるわ……」の言葉を信じて、ついにウィルはスカイリーと人生をともにすることを選んだのです。
実際、感覚型は結婚を決断するまで、何年もかかることが多いです。
ウィルは、メタ認知能力を成長させ、大人への一歩を踏み出したのです。

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